イケメン仰天チェンジ
自閉症の長男はややぽっちゃり体型。中学一年生の夏休み、彼は突如ダイエットに目覚めた。
きっかけは、世界仰天ニュースのイケメン仰天チェンジだ。
昔は太っていた男の人がダイエットによって劇的に変身した様を、面白おかしいエピソードを織り交ぜながら紹介する名物企画だ。
長男はこの企画のぽっちゃりエピソードが大好きなのだが、最近は痩せて変わった姿の方に興味を持ち始めた。
『僕も痩せたらイケメンになれるかな』
外見に無頓着だった長男が、こんなとこを言うようになった。
運動習慣の少ない長男に、少しでも体を動かすきっかけをつくりたいと思い、
『そうだね』
と答えた。
これが約1ヶ月前の会話だ。
夏休みに入ると、長男は自主的に散歩へ出かけるようになった。
夕方になると水筒を持って、一人で散歩に出かける。
家の周りや中学校、卒業した小学校など、知っている道をグルグルと1時間歩いている。
以前の散歩は、私か妻が同行し、所要時間は約10分程度だった。
その短い散歩ですら『疲れた』『帰りたい』を連呼していた。
今では精力的に散歩へ出かける。
雨が降っていない限り、毎日この散歩を欠かしていない。
散歩の他にも、長男は2〜3日おきに近所のプールへ行き、一人でクロールの練習をしている。
さらに、おやつの量を減らし、ジュースを控えて水を飲むようになった。
彼の夏休みの過ごし方は、とてもストイックだ。
以前の長男は、ソファーに寝転がってテレビやゲームに興じる子だった。
水族館のアザラシのようだった彼が、活発な牧羊犬のようになった。
思春期がそうさせているのだろうか?
8月、彼の仰天チェンジを遂げた姿を見て、『すごーい』と番組に倣ってリアクションしたいと思う。