小さな友人との別れ
ゴールデンハムスターのハムちゃん(オス)がウチにやってきたのは、コロナ前の20年冬だった。
子どもたちにとっては初めて飼う(触れ合える)ペットだったので、
ハムちゃんのことはとてもかわいがってくれた。
ハムちゃんの一挙手一投足を愛でた。
それは親も一緒であり、スマホの画像フォルダはハムちゃんの写真で埋めつくされた。
ハムちゃんはゲージの中にいるだけでかわいかった。ハムスターはかわいいでできている。
化粧品のキャッチコピーのようなことを日々感じていた。
ハムちゃんは、一般的なハムスターよりも“夜行性度“の高いコだった。
お寝坊さんなので、日中その愛らしい姿を見ることがなかなかできない。
それがより愛されるきっかけになった。
なかなか会えないので、会えると嬉しい。そしてかわいい。
寝床にケナフという繊維素材を用意したことで、ハムちゃんの“夜型生活“は加速した。
ケナフの中で寝ていても、呼吸で上下動する様がかわいい。
ハムちゃんのゲージを覗き込むことが生活習慣の一つになった。
ハム愛は加速し、ハムスターなら絵であれキャラクターであれ全てかわいいと思うようになった。
「ハムスター助六の日常」に出会ったきっかけもハムちゃんを愛でたことだ。
ハムスター愛好家には最大の悩みがある。それは、お別れの早さ。
ゴールデンハムスターの寿命は2〜3年。
別れが辛いという意見は、愛好家に共通したものだ。
ハムスターの飼育本や愛好家のSNSを見て、早すぎる別れの辛さに備える必要性を理解した。
覚悟はしているつもりだったが、いざその日が訪れると寂しかった。
ハムスターはたった2千円で購入できる。そして、2〜3年しか生きられない。
言い方は悪いが、ちっぽけな小動物だ。
だが、彼はウチにとって大切な存在だった。
ハムちゃんは急に死んでしまった。
食欲がないなと思った次の日に死んでしまった。
動物病院へ連れて行った日の夜に死んでしまった。
不調に気づいてあげることができなかった。
突然の別れに、次男は号泣。
動物病院へ連れて行ってくれた妻も泣きじゃくっていた。
自閉症児の長男は、早寝の習慣のため別れの瞬間に立ち会わなかった。
翌朝ハムちゃんのことを告げた時、泣きはしなかったが呆然としていた。
『ハムちゃんはもう起きないの?』
『ハムちゃんは死んじゃった?』
彼なりに理解しようとする様子を見て、涙が滲んでしまった。
ちなみに、私は出張中だったので、会えないまま別れることになった。
お世話係でごはん係だった私は別れに立ち会えなかった。
残念に思う反面、家を開けていてよかったとも思う(妻よ、すまん)。
長男が調子を崩してしまったのは、前回書いた通りだ。
眠りが浅くなり、色も細くなった。
次男は長男以上に落ち込んでしまった。
睡眠、食欲だけでなく、ハムちゃんを思い出して泣いてしまうなど、心配な兆候が見られた。
次男は感受性が強いので、ショックが大きかったようだ。
長男と次男は、日頃ハムちゃんとあまりスキンシップを取らず、触れるより見ているだけだった。
ドライだと思っていた彼らがショックを受けていることは、少々意外だった。
寝ているハムちゃんを起こさないようにしよう。
落としたら怪我しちゃうから、見ているだけにとどめよう。
彼らなりの優しさがドライな接し方の要因だったと、別れた後に知った。
子どもたちは少しずつ元気を取り戻してくれた。
今は毎日お墓のある庭に向かって手を合わせている。
『ハムちゃんは天国で楽しんでるかな?』
『ハムちゃんは楽しんでいるよ。お空からキミたちのことを見守ってくれているよ。』
虹の橋の話を彼らにした。
もう少しハムちゃんのことを書きたいと思う。