合唱の不安克服
秋は学校行事がてんこ盛り。運動会や文化祭、発表会など盛り沢山だ。
イレギュラーな行事が苦手な自閉症児にとって、鬼門の季節だ。
ウチの長男は、初めて中学校で迎えるこれら行事に戸惑っていた。
これらの中で、今回は発表会について紹介したいと思う。
長男の通う中学校では、地域合同の合唱コンクールがあるらしく、長男もこの練習に参加していた。
長男は合唱の練習に苦手意識を感じ、強い不安を感じていた。
過去形で書いたのは、克服方法を見つけ、それ以降は驚くほど不安を感じなくなったためだ。後程紹介する。
話を元に戻す。
時間割に合唱の練習があると、長男は朝から元気がなかった。表情は固く、食も細かった。
なぜ合唱が苦手なのか、不安の根本原因を探るため、長男に質問した。
長男曰く、歌をうまく歌えず、下手に歌ってしまうのが恥ずかしいのだという。
親バカかもしれないが、長男は歌がうまい方だと思っている。
カラオケでは楽しそうに歌い、音程やリズムを取るのも上手い。
ただ、合唱はカラオケとは勝手が違うようだ。
他の生徒の歌声が気になってしまい、音程が取りにくいのだという。
「音痴だと思われるから歌うのが嫌なんだ」
と長男は言っていた。
歌うのは嫌。でも、長男は合唱コンクールには参加したい。
長男はこう思っている。
苦手な行事であっても、みんなと一緒に参加したいと言ってくれていることは、親としてとても嬉しかった。
ただ、日常生活にマイナスが生じている。何とかしてあげたい。
丁度長年に渡り長男を診て下さっている主治医の問診があったため、合唱コンクールの件を相談してみた。
「口パクをしたらどうだろう」
主治医の提案は簡単なものだった。要は”歌わなければいい”ということだった。
先生は常々、
自閉症児は健常児と違い、無理して学校行事に参加してもプラスに働かない
と言っている。
「無理して歌う必要はない。歌っているように見えればいい。
上手く歌えないという不安がなければ、長男はコンクールに参加できる」
という助言を頂いた。目から鱗だった。
注意点として、”口パク”というネガティブな要素を含んだ言葉を用いないようにアドバイスを頂いた。
これは、悪いことをしていると思うことで、生真面目な長男が不安を感じる恐れがあるための配慮だ。
”歌う演技”と言って伝えることにした。
長男はジャニーズのアイドル好きなので、彼らもこの”歌う演技”をしていると伝えることにした。
(ジャニーズファンの方、大変申し訳ありません。貶める意思はないのでご容赦下さい)
長男にジャニーズの歌う動画を見てもらい、”歌の演技”をしていることを説明。
そして、「”歌う演技”を上手にすればいいんだよ」と伝えた。
長男の顔は明るくなった。そして、歌詞に合わせて口をパクパクする練習をした。
学校の先生方には、長男が合唱に不安を感じていること、不安解消のため口パクで参加させてほしいこと
この2点を相談し、了承を頂いた。
”歌う演技”を始めてから、長男は合唱コンクールの練習に不安を感じることがなくなった。
上手く歌う→上手く演じる にシフトした長男は、積極的に練習をこなすことができるようになった