テレビは敵か、味方か ①
「赤ちゃんの時にテレビを見せすぎると自閉症になる」という“都市伝説“めいた話は、ガセの割にはよく耳にする。私はこう考える。テレビが自閉症児を作るのではなく、自閉症児はテレビが好きなのだ。テレビへの関心と執着の強い子は、注意した方がいいかもしれない。さて、この自閉症児の親を追い詰める常套句は、実に使用頻度が高いように感じている。我が家も散々この手のことを言われて傷つけられた。
自閉症の長男は、1歳に満たない頃から何だかわからないはずのテレビをよく見ていた。じっと見つめていた、が正しい表現だ。長男は、スマホには興味を示さず、テレビを好んでいた。「スマホよりはマシかな」と思い、テレビから引き剥がすことはしなかった。もちろん、生活リズムの乱れや視力の低下につながるので、テレビの見せすぎは良くない。子守役の一部をテレビに担ってもらっていた、という表現が正しいと思う。判定が出る前から、何かおかしい長男の子育てでストレスは溜まるばかりだった。子育てのストレスで親が潰れてしまうのを防ぐ意味で、テレビをうまく付き合っていくことが必要なのではないかと思う。半分自己弁護だ。
私の知っている自閉症児は長男だけなので、1/1の事例として紹介する。
一つ目の特徴;長男は最近まで、一切オンタイムで見なかった。どんな内容なのか分からない番組を見るのが怖いことが理由だ。同じようなテレビの視聴をする子は、療育のクラスにもいた。自閉症児によくある拘りなのかもしれない。第一段階の変化は一昨年前。登校前にEテレの番組を見るようになった。第二段階は今年。放送時間が変わったクレヨンしんちゃんとドラえもんをオンタイムで見るようになった。理由は、データ放送に参加する為だった。長年拘っていた“録画原理主義”は、データ放送のゲームに参加するという、思わぬ目的で緩まった。
二つ目の特徴;次週の放送を楽しみに待っていない。気に入った番組を繰り返し見ることが、テレビの楽しみ方のようだ。これは、一つ目の特徴と同じ要因によるものかもしれない。「続きを知りたい」という好奇心はあまりなく、気に入った番組の「気に入った放送回」を何度も見たいと思っているようだ。ただ、最近上記のクレヨンしんちゃんとドラえもんは、次週予告を気にするようになった。
三つ目の特徴;その好きな番組の好きな回も、基本は“流し見”。30分番組であっても早送りしながら見ている。番組そのものよりも、番組の中の好きなシーンを見たいようだ。5分番組の0655であっても、ハマっていないコーナーは飛ばす。
このように、長男のテレビ視聴は独特だ。その為、“普通にテレビをする”次男は、一緒にテレビを見ない。親の視聴方法とも違うので、我が家にはレコーダーが4台ある。
テレビは我が家の中心に鎮座している。