神頼みの危険性 続編

神様にすがりたくなる程 自閉症は辛い

宗教も民間療法も効果は不確定だ。もしそれらで救済されるなら、世界中の自閉症児とその家族数千万人が苦しさから解放されている。
簡単に救ってもらえるものではないということなのだろう。
私自身は無宗教・無神論者だが、宗教自体を否定するつもりはない。
信仰心は、人間が生きていく上である程度必要なものだろう。
ただ、強引な勧誘やお布施を要求してくる厄介なものがある。

あやしげな民間療法とあわせ、私が知っている範囲で怖いと感じたエピソードを3つ紹介する。

療育施設に掲示されている注意書き

我が家が利用している療育施設のフリースペースにこんな注意書きが掲示されていた。

「声をかけ宗教の勧誘をする人がいます、利用者の方は十分注意して下さい」

施設の利用者は、障がい者とその家族だ。身体・知的、重度・軽度、障がいの違いはあれど皆困りごとを抱えている。
苦しい、辛い、今の生活に救いが欲しい、利用者のほとんどはこう思っている。
いかがわしい宗教にとって”いいカモ”なのだろう。
心を強く持っていないと、人生を捧げてしまいかねない。
怖さと共に、「”本当に困っている人”を狙うなよ」という強い怒りも感じてしまう。

療育をやめて新興宗教にどっぷりハマり、音信不通

これは療育の先輩ママの話だ。そのお母さんの子は自閉症児であり療育を受けていたのだが、日常の困りごとがなかなか緩和されなかった。
我が子に手を焼いて、そのお母さんはかなり不安とストレスを蓄積して悩んでいたらしい。
そのお母さんは子どもを通園させなくなってしまった。
幼稚園でいう年長の年に療育施設も卒園をするのだが、卒園式の後、そのお母さんが久しぶりに施設へ来て
 ・今の自分たちは○○という新興宗教の教義に従った生活を送り自閉症の困りごとが緩和されていること
 ・療育がいかに無駄で効果がなかったか、療育の否定、施設への文句
これらを一方的にまくしたてていたらしい。通園していた頃は旦那さんがいて療育にもちゃんと参加していたが、この卒園式の時には片親になってしまっていたらしい。
旦那さんは逃げてしまったのだろう。

次は、妻が持ち掛けられたいかがわしい民間療法の話だ。

自閉症の原因は、体内に含有する水銀。その水銀を除去する治療法がある

自閉症の長男が療育を開始して間もない頃、ママ友達(子どもは健常児)に日々の苦労を話した時、
言われたのがこれだ。
ママ友達はおそらく善意で話をしたのだと思う。記憶が定かではないが、身近な自閉症の子がこの治療を受けている、
と言っていたと思う。
このテの民間療法は、幾らでもある。体内に残留する農薬の除去だの、電気を流す治療だの、
雨後のタケノコのように”新治療法”話は湧いて出る。
世界には自閉症児が数千万人はいて、介助する家族の人数はその倍以上いる。困っている人の数は膨大だ。
もし、自閉症の効果的な”治療法”が見つかっているのならば、その医師はすでにノーベル賞を受賞しているだろう。
莫大な儲けを生むのだから、世間に秘匿する理由はない。
つまり、そんな治療法はないのだ。

藁にもすがりたい気持ちはとてもよく分かる。療育を始めた頃の我が家もそうだった。
私は無神論者だが、お寺や神社、ご先祖様にも「お願い」をした。
今のところ、魔法のような困りごと解消の術はなく、療育以外の術はない。

療育を継続しよう

子どもの成長を待とう

親は気持ちを強くもとう

療育の卒園式。苦労は多かったが、この時身に着けたことが今の礎になっていると思う。