家族に自閉症児がいてよかった Best3
何かと苦労の多い、自閉症当事者家族。
一番苦労しているのは自閉症の本人で、ストレスや不安を最も感じているのは本人だ。しかし、支える家族も大変な苦労をしている。
自閉症の長男を育てる上で苦労は多い。外出や食事に制約は多い。
端から見たら、辛いことばかりの生活に見えるだろう。確かに辛いことは多いが、楽しいことだってちゃんとある。
苦しみの多い日常の中から、敢えて“自閉症の当事者家族でよかった“と思えることをベスト3形式で挙げてみようと思う。
第3位 成長の喜びを強く感じることができる
長男の成長スピードはかなり遅い。歩みこそ遅いが、長男は少しずつ出来ることを増やしている。健常者のそれと比べたら、長男の成長はゆっくりだ。ただ、成長の足跡を一つずつ確認し、噛み締めることができる。出来るようになったこと一つひとつに、感動することが出来る。大変さと表裏一体なのだと思う。親としてありがたみとやりがいを感じる。
第2位 子どもとの距離間がとても近い
小学校高学年になると、子どもは“親離れ“して、それまでのように一緒にいることを拒絶するようになる。長男と我々の距離感は、彼が小さい頃からあまり変わらない。100%の信頼・信用を以て親を頼ってくれる。年齢不相応のベタベタ行動をすることはあるが、そんな時は『ベタベタしちゃダメだよ』と言えば、ちゃんと理解できる。親と子の信頼関係が濃いまま長く続くような感じがする。
いつか親離れ子離れという問題には直面するのだろう。今はこの関係性を楽しみたいと思う。
第1位 困難に打ち勝つことで、強くなれる
私だけでなく、家族全員にいえることだ。長男と生活する中で、一般の家庭に比べて遥かに多くの困難に直面する。しかし、それらを乗り越えてきた。”どんな困難であっても、必ず乗り越えられる”と思うことができる。長男を支える中で培った能力が、家族にはそれぞれあると思う。私は洞察力や不安に対する耐久力、妻は精神的な逞しさと共感能力が身に付いたと思う(私の場合は、発達の凸凹ゆえの困難や心労があるので、差し引きすると収支はマイナスかもしれない)。一番変わったのは次男だろうか。同年代の子に比べて、突出して洞察力や共感力、小さい子や困っている子への優しさなどが秀でている。先生や周囲の大人からいつも褒められている。忍耐力は言わずもがなだ。これらは、自閉症の兄を持ち、自分が我慢をしたり兄を支えることで培ったものだ。長男がいることで、おそらく彼の人生は相当違うものになっただろう。これからはもっと違うだろう。
強くなれたのは、長男本人にもいえることだ。最初は出来ないことばかりだった。不安を感じることばかりだった。第3位に書いた通り、成長はゆっくりだが、少しずつ出来ることを増やせたことで、彼は自信を身に付けている。自閉症児には珍しく、コミュニケーションを非常に好む。自信の裏付けだと思う。世間一般で非常に強いストレッサーとなっているコロナ対応についても、長男は余裕で順応している。昔は想像できなかった、逞しい姿だ。
数年前は、”いいことなんて何一つない”と思っていた。事実、何もなかったと思う。
過酷な境遇を呪い、運命を嘆いていた。時が経ち、今感じていることは、その頃とは違うものだ。どんな状況に置かれたとしても、考え方一つで、行動一つで、変えることができる。
コロナ禍は世界に大きな影響を与え、人々を絶望の淵に追い込んでいるが、我が家においてはビフォーコロナと何も変わらない。ショックも不安もない。
困難には慣れている
困難はきっと乗り越えられる
そう思うことができるからだ(もちろん不安が全くないわけではないが)。
今介助が大変で、絶望している親御さんがいたら、『いつか必ず好転する。希望を捨てないで』と声をかけたい。
自閉症児だって成長できる。
自閉症児だって大切な我が子だ。
きっと幸せを与えてくれる。
そう信じぬくことが肝心だと思っている。