かつての強いこだわり こいのぼり編
長男は、自閉症児の例に漏れずこだわりが強い。
好きなものにはとことんこだわる。
自閉症の代表的な困難さの一つに、
こだわりに“囚われて“しまい合理性や効率を欠いてまでこだわりを突き詰めてしまう
という点が挙げられる。
数年前の長男は、軽微なものから面倒なものまで、多くのこだわりに“支配“されていた。
強すぎるこだわりは、生活に多くの困り事を生み出した。
洋服、お出かけの際の順路や電車ダイヤの固定、入浴の時刻、献立など、多くのルールが本人と家族を縛っていた。
コロナ禍が始まった頃から、こだわりが急激に緩和された。
中学生になった今、本人と家族がストレスを感じるようなこだわりはほぼ消えた。
困り事ではなかったが、何故こだわっていたのか未だに謎のこだわりについて紹介したい。
今回はこいのぼりについて書く。
長男は、言葉を発する前からこいのぼりが大好きだった。
今でもこいのぼりは好きであり、庭に掲げている家を見つけると喜ぶ。
ウチでもこいのぼりを掲げている。
『色と大きさの異なるこいのぼりが靡いている様が好きだ』と長男は教えてくれた。
公園や施設で大量のこいのぼりが靡いている姿が最も好きで、こいのぼりを見るためだけに出かけたこともしばしば。
こいのぼり好きは本物だけではなく、手製のものも好んだ。
今回紹介したいのはこの点。
未就学の頃、私は長男からマジックを渡されて、こいのぼりの絵を描かされた。
絵には一定のルールが存在し、吹き流しと父鯉(黒)母鯉(赤)、子どもの鯉は青、緑の二匹と決まっていた。
これらをA4の紙に描き長男に渡す、長男はこの絵をファイルに入れる。
長男は私が描いたこいのぼりの絵を溜めていた。
同じような絵を、私は毎週描かされていた。
子どもの日の前後である4〜5月だけではなく、夏でも冬でも描かされた。
ちなみに、私は下手ではないが絵心はない。
決して上手くないこいのぼりの絵を、長男は欲しがった。そして、何枚も所有していた。
きっかけは、療育で色塗りしたか、教育番組で見たか、いずれかだったと思うが、定かではない。
長男のおかげで私はこいのぼりを描くのが上手くなった。
このこいのぼりの絵を描かせるこだわりは、引越しと小学校進学に伴って無くなった。
こいのぼりの季節になると思い出す。
先日、長男に当時描いていたこいのぼりの絵を再現して描いてみせた。
長男は『ふーん』と言われただけで終わった。
『いらない』や『懐かしいね』などの言葉は返ってこなかった。
もうこだわりはないようだ。