自閉症家族とウィズコロナ 意外とマッチしている

春先の自粛生活、6月末に解除されたものの新規感染拡大により、再び自粛せざるを得ない。このところ日本の旗色は悪い。お出かけできない、旅行できない、帰省できない。世の中皆困っている。週末遊びに行くのも気が引ける。自由な行動や生活ができないことに、皆ストレスを感じている。

我が家は、これらの自粛に全くもってストレスを感じてない。なぜなら、自粛を求められている行動は、元々我が家ができないことだからだ。旅行はしたことがない。外泊は、昨年初めて1泊することができた程度。長男は知らない場所へ出かけることが苦手なので、行動規制に引っかかるものは少ない。大好きなよみうりランドや八景島などへ出掛けられない(営業はしているが、感染を恐れていかないことにしている)ことも少し残念がった程度であり拒絶はない。
コロナによって制限されていることの大半は、長男が苦手とすることなので、我が家は直接影響を受けずに済んでいる。

友達と家族ぐるみで遊ぶ習慣もほとんどなかったので、人と会えなくて辛いと言う事はない。私や妻は、友人と遊ぶ余裕を元々持っていなかったので、コロナで会えなくなってもダメージがない。私は友人や同僚とのプライベートな付き合いがほぼないので、飲食がなくても全く苦にならない。意外なほどコロナの影響は小さい。

コロナ禍の当初は、我が家の生活はボロボロになってしまうと恐れていた。長男は、生活の変化を柔軟に受け止めることができた。これほどまでに安定した日々を過ごせるとは夢にも思わなかった。コロナ以前は、毎週末何処かしら出かけて子どもたちを楽しませようとしていたが、これができなくなった。にもかかわらず、長男はテレビとゲームとスマホがあれば、特に毎週末出かけなくてもいいようだ。今まで無駄遣いの多い生活を送っていたようにすら感じている。

出かけられないことや飲食にお金をかけられないことで、我が家はコロナ以後、お金が増えた。会社のつまらない飲み会がない、など、私の支出が大きく減ったことも後押しをしている。このご時世、さまざまな経済苦がある中で、とても有難い事だと思っている。

元々制約の多かった我が家にとって、コロナによる自粛は大きな制約にならなかった。むしろ、元々の生活の中にあった制約の方がよほど不自由で、これがむしろコロナによって緩和されつつある。長男が「コロナが終わったらやって見たいこと」「行って見たい場所」を自分から言うようになった。家にいる時間が長いことが、挑戦意欲を醸成しているようだ。予想外のプラスまで生じている。

日本、世界は、コロナによって大きなダメージを受けている。数ヶ月後、1年後、どのような状態になっているのか、想像もつかない。
ただ、我が家に関しては、家族で日々楽しく過ごすことができたら何とかしてなりそうだ。正直なところ、会社やら経済やら、日本やら世界やら、気を配る余裕が私にはない。関心もあまりない。
家族だけを大切に想い続けていれば、ウィズコロナ、アフターコロナもやっていけるのではないかと思っている。コロナ禍は、一番大切なのは家族だと改めて教えてくれた。コロナウィルスに感謝の念はないが、生活や生き方を見直すいいきっかけになった。前向きに苦難の時代を乗り越えようと思っている。

余談だが、コロナ禍の自粛が苦しくなかったと言う事は、それだけ普段の生活が苦しかったと言う事だ。自閉症児を抱える家族の生活は、やはり過酷なのだと思う。我が家は幸にしてダメージがほとんどなかった。しかし、大きなダメージを受けている自閉症児を育てる家庭は、少なくないと思う。
政府や自治体には、健常でない人へのコロナ支援も検討して欲しい。当事者家族が最も辛いのは、「無視されている“と感じる事”」だからだ。せめて、関心を示して欲しい。何かの会見で触れて欲しい。