急に芽生えた好奇心 きっかけは、テレビ?それとも?

自閉症の長男はとにかくよくテレビを見る。ただ、視聴方法が変わっている。ダラダラと見てしまう「ながら見」の時間が長い訳ではなく、気に入った録画番組を見る、その時間が長い。長男は気に入った番組を繰り返し見るのだが、その見方は変わっている。一つの番組を最初から最後まで見るのはなく、好きなシーンを探して何度も見る。常にリモコンを携えてテレビと対峙、リモコンの「15秒送り」「10秒戻し」を駆使して差の5秒を上手く使いながらサーチをかける。番組に自動打刻されるチャプターの早送りや巻き戻しも使う。複雑な操作で、お気に入りのシーンを探す。サッカーのVARを彷彿とさせる。私にはこの長男と同じ操作ができない。リモコンが摩耗するので、あらかじめ予備機を買ってある。

テレビにこだわりを持つ自閉症児は多いと聞く。我が家と同じ、オンタイム視聴できないこだわりを持つ自閉症児の話はよく耳にする。毎週、もしくは、毎日、決まったタイムスケジュールで視聴することで、落ち着きを得るという話も多い。ただ、このこだわりのこの場合、特番や突然のプログラム変更、更には番組改編期に不安定になるという。パニックを起こしてしまい、なだめる家族はとても大変。テレビ欄を恐る恐る見る親御さんもいる、と聞く。拘りとの付き合いはとても大変だ。長男にはこのようなこだわりはなく、放送していなければ諦められる性分なので、困ったことはない。ただ、大変さは想像できるので、話を聞くだけでぞっとする。
自閉症の典型的な特徴は、こだわり。こだわりの強さから生じる生活ルールと面倒なルーティンに、家族が振り回らせて辛い、というのが、一般的な当事者家族の苦労だと思う。未就学の頃の我が家もそうだった。

ただ、ここ数年で急速にテレビへの拘りが緩和されているように感じる。緩和された一番の要因は、前述の独特な視聴方法だろう。自分の気に入ったものを「探し出し」、何度も視聴する。自分の操作で自分の好きな番組の好きなシーンを見る。勝手に探して見る。自己完結できるのでストレスを感じないのだろう。自分でできるようになると、こだわりは薄まった。ストレスを感じなければ、こだわりは弱まるのかもしれない。

更にここ数ヶ月で新たな変化が生まれた。初めて見る番組を嫌がらなくなり、その番組が特集しているものに興味を示すようになった。その番組で気になった情報を自分で調べるようになった。調べる手段は、本やタブレットで、親の補助を必要としない。知識を増やすきっかけになっている。番組だけでなくCMもソースになるようだ。スパリゾートハワイアンズやピクサーの映画はCMきっかけ、情報系バラエティー番組から各地の遊園地や動物園水族館、海外旅行に興味を持っている。タブレットで調べるだけでは味気ないので、ガイドブックを買い与えている。
とてもいい好奇心のサイクルが廻っていると思っている。限定された興味が自閉症の特徴だという認識があったので、今のような興味が外に向き続けている姿にとても驚いている。いい意味で予想を裏切ってくれている。自閉症児の、興味の世界を広げることは難しいと聞いたことがある。自分から広げてくれるのはとても有難いことだ。今のいいサイクルがこれからも廻るようにサポートしたい。

なお、前述の興味関心が広がったきっかけだが、何が因子になったのか、思い当たる物がない。無理に探し出すとしたら、日常のストレスを軽減させたことぐらいだろう。嫌がることを無理強いせず、投薬も拒絶せず受け入れる(我が家は未就学の療育の頃から、投薬治療を受け入れる方針を採っている)。毎日楽しく過ごせることを第一に考えている。他のご家庭にオススメできることがあるとしたら、この点だけだと思う。

ストレスを軽減させ、本人が毎日楽しく過ごせることを第一に考える。
親もストレスを感じないことを最優先する。
効くかどうか分からないが、ストレスフリーを第一に考えてほしいと思う。