自閉症 現実を受け入れて向き合おう

前回、適切な支援(=療育、特別支援学校ないし学級、等)を受けることが大事だと書かせて頂いた。
今回は、その支援を”拒否”しているご家庭の事例を紹介し、どのような困り事が起こり得るのか表したい。

事例1 A君の普通級在籍にこだわり続けるご一家

A君は長男と同じ学年で、A君のお母さんと私の妻は仲良く話す間柄。A君は衝動的に手が出てしまう、ADHDタイプの男の子。
クラスメイトとのケンカや物損など、クラスのトラブルメーカーになっている。運動会では、勝ち負けへの強いこだわりから、
自分の属する組が負けて”準優勝”になったことが分かると、ひっくり返って号泣し校庭を走り回ってしまった。
担任の先生からは毎年特別支援級への転籍を勧められているが、拒否しているという。
A君のお母さんに聞くと、旦那さんが支援級への転籍を頑として受け入れず、普通級の在籍を強く要求している。
お母さんは、子どもの為を思えば支援級に移るべきだと考えているが、旦那が絶対拒否なので家庭内は険悪だという。
A君のトラブルで度々学校に呼び出され、時にはA君をクラス内で見守ることを学校から求められる為、お母さんはかなり疲弊している。

A君は、私の見るところ、間違いなく自閉症だ。ただ、ウチの長男よりもかなり軽度で、適切な支援があれば確実に安定すると思う。
A君は常に不安を感じていて、それが癇癪の原因になっている。支援級に移り、不安を軽減するサポートを受けられれば、状況は
大きく好転すると思われる。ウチの長男がまさにそのパターンだ。

うかがい知ることはできないが、A君の年齢を考えれば、クラスでの居場所のなさは理解できるだろう。自己肯定感も喪失しているのではないか。
親の「わが子が支援級に通うなんて、耐えられない」という”エゴ”がわが子を苦しめている一例だ。

事例2 かなり大きくなってから困り事が表出し、自信を失い粗暴になってしまったB君

妻が以前勤めていた会社の同僚で、今でもやりとりがある女性のお子さんがB君。B君は自閉症”グレー”の判定で、未就学期や小学校低学年の時には
大きな困り事はなかった。普通級に在籍し、生活や学業でも大きな問題は起こっておらず、周りに”ついていく”ことができていた。
高学年になり、徐々にうまくいかないことが増えた。周りの精神的な成長についていくことが出来ず、空気を読むなど非言語コミュニケーションが
出来ず、勉強もわからないことが増えだした。自己肯定感を失い、問題行動が表出するようになった。

学校から特別支援級への転籍を進められたが、B君は頑として拒否。「僕が”支援級みたいなところ”へ移るなんて、プライドが許さない」
B君は十分成長しているので、支援級が”どのようなクラス”か分かっている。自分がその対象になることをどうしても受け入れられない。
B君の問題行動はエスカレートし、家で荒れることが多くなった。B君のお母さんは心を病んでしまい、現在は入院している。

このケースの場合は、グレー判定だったことで療育等のサポート対象からこぼれたことが、結果として不幸だったという例だ。


上記事例のお子さんは、どちらも自閉症の程度はウチの長男より軽度だ。出来ることは長男よりはるかに多いだろうし、知能も高いだろう。
でも、長男よりも強い不安を感じており、幸福感を得ることが出来ていない。

障がいの重さと幸せは、必ずしも比例しない

私自身がわずかな発達上の違いで、二次障害や会社生活で苦しんでいることも、これを表している。
日本の支援体制はかなり手厚く、技術レベルはかなりのものだと思っている。
ただ、圧倒的にリソースが足りていない。グレー判定であっても支援が受けられるようなリソースが確保できれば、多くの自閉症児と家族の
生活を向上させることが出来るのだが。リソース→カネ、なので、今の日本に拡充を望むことが難しい。

我が家は、耐え難い苦しみを味い続けてきた。辛かった。大変だった。でも幸運だった

そう思っている。


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