TEACCH 家庭に少しだけ取り入れてみた ②
苦手をカバーする
自閉症児には能力の偏りがある。得意・不得意が極端に分かれている。不得意なことは、人によって様々だ。生活面の不自由やイライラの原因に直結する。じっとしていられない、字が書けない、聴覚触覚の過敏など。苦手克服は容易ではない。自閉症児の場合、どれだけ努力しても難しいケースが多い。努力の過程でストレスを溜め、自信をなくし、周囲と本人のストレスが相まって二次障害が起こることもある。努力と成果が全く見合わないのだ。
- 得意なことを伸ばし、苦手をカバーする
- 苦手なことに目をつぶれる方法を模索する
まずは当人の特性を見極める。苦手なことをなるべく体験せずに済む環境を用意し、得意なことを生活力に繋げる。あわよくば得意を以て苦手を挽回する。これに有効な手法が構造化であり、物理的、視覚的構造化などを検討する。
以前の長男は、予定の把握が苦手だった。いつ何が予定されているか、どんな順番で何をするのか、どれぐらい時間がかかるのか、見通しが立てられなかった。見通しが立たないことによって、ストレスを蓄積し、パニックを起こす原因になっていた。時間を視覚化することによって、苦手な目に見えないスケジュールのマイナスを解消する。
長男の強みは視覚の記憶力なので、スケジュールを可視化できればインプットは簡単だ。過去の投稿と内容は重複するが、
・一日の予定 ホワイトボードに一日のスケジュールを明示
・直近の予定 ホワイトボードに数日の予定を明示
・先の予定 カレンダーによる予定の明示
これらを用意した。
以下は、新しい内容。
当時は時計が読めなかったので、残り時間が分からずトラブルの種になっていた。
残り時間が時間が進むと赤い扇が小さくなるタイマー(※)を購入した。時間の減り具合が一目でわかるという代物だ。
この特殊なタイマー以外にも、スマホなどのタイマーも積極的に活用した。
長男は、ホワイトボードやカレンダーの「今がどこか」分かっていなかった。その為、予定を可視化しても、不安は消えなかった。そこで、前述のツールに下記のような工夫を加えた。
- ホワイトボードの予定は、一つひとつの予定が終わるたびに、斜線を引く・文字を消す・絵カードを外す → 予定のどこまで進み、この後何が残っているのか分かるようにした
- カレンダーの過去の升目に大きく×を書く → ×のない一番大きい日付けが今日になるようにして、今日がカレンダーのどこなのか分かるようにした。土日までの日数が分かるようになると、週後半かな療育の疲れでパニックを起こすことが少なくなった
- カレンダー、時計のおべんきょうをした → 長男の不安の大半は、予定の見通しだった。小さい子でも読みやすい時計を壁に設置したり、全部ひらがなで月曜日からスタートするカレンダーを自分で作った
これらの対応は、小学校へ進学した後に大きな効果が表れたと思っている。予定の概念が身に着いたことで、不安な予定を先生や親に相談することができるようになり、また、予定の相談・調整ができるようになった。
見通しが立たず不安になるのは、自閉症の典型だと聞いたことがある。日程や時間の概念を早めにマスターできれば、暮らしやすさは格段に向上する。お困りの親御さんがいたら、TEACCHのエッセンスを取り入れて工夫を試みてほしい。
(※)のタイマーです。赤い部分が減ることで、時間の経過が分かります