自閉症と防災について ~風水害、南海トラフ地震に備える
日本は地震や火山の噴火、台風など、自然災害の多い国だ。近年は、台風の勢力が強まっていることと記録的な大雨によって、避難を余儀なくされる緊急事態が頻発される。自宅が被災してしまったら、多くの場合避難所で過ごすことになる。自閉症の長男を育てる私と妻には、気がかりがある。
我が家は避難所に入れるのか
東日本大震災や熊本地震のニュース記事を細かくチェックすると、自閉症児を抱える家族や発達障害の当事者、ほか障害を抱える方が、避難所や仮設住宅で感じられた苦労や受けた仕打ちなど、辛い思いをされた話を見知ることができる。これらは”明日は我が身”の話だと思っている。
自閉症の長男は、生活のルーティンが崩れることを嫌う。また、愛想はいいが人見知りが激しい。更に、クラスの友達などの知っている人に想定外の場所で会うことでストレスを感じる。緊張感を肌で感じる鋭敏さもある。
県や市かあ、避難しろ、避難所へ行け、と言われても、おそらく長男を連れて避難所へ行くことはできない。物理的に避難所へ行くことが難しい上、注意や非難を受けることなく避難所に留まることは更に難しい。非難生活で神経質になっている他の避難者から強い注意を受けることは必至だろう。
私と長男は、避難所には入らない、と決めている。避難所へ入れない前提で、非常時の対応方法を考えている。
夏以降の台風被害、ひょっとしたら地震によって、避難を余儀なくされるケースは日本全国で想定される。自閉所の家族を持つご家庭の参考になるかもしてないので、我が家の防災対策、構え方を書きたいと思う。(少々極端な考え方かもしれない)
避難はしない、基本的には家に留まる前提の用意
避難所へ行くことは難しい。どうしてもの場合は、長男と私は家に残り、次男と妻だけ避難所へ行かせる。極力家に留まることができるように、備蓄品の用意をしている。設備としては、停電断線対策として太陽光パネル、断水対策として水タンクなどを設置している。趣味のキャンプ用品も防災にフル活用しようと考えている。
会社から急いで家へ帰る。大きな余震が起こるまでに必ず!
私の勤める会社から家まで約40km。地震が起きた場合には、最短距離の港湾エリアは通れないので内陸部を通る必要がある。多摩川と鶴見川を越えなければならない。地震(洪水の場合も)最低でも8時間以内に帰宅することを家族に約束している。私はランニングを趣味にしていて、月100~150km程度走っている。もちろん走る理由は楽しいからだが、非常時に備えることも要因の一つだ。懸念しているのは、会社や東京都が待機を命じた場合。私は自分の安全には興味がなく、危険を冒してでも家族の安全の為に帰りたい。会社に背いて抜け出す、場合によっては懲罰、解雇も覚悟しなければならないと考えている。
会社より家庭、自分より家族、ウェイトは常に変えない
私が仕事をしているのは家族の為だ。独り身だったら、おそらく会社勤めなどしていない。4人家族の我が家で、最初に死ぬべきは私だ。これを考えない日はない。いかに家族を救うか、場合によっては私は誰の身代わりになるべきか、行動原則の基本に置くよう努めている。前述の、会社での待機指示が出た場合、この行動原則に従って行動する。一番ベストな行動は、地震や大規模洪水など発生時に、”わざとロスト状態になる”ことかもしれない。そうすれば、自由に家を目指すことができる。
最後の最期、覚悟を決めて長男のお供をする
どうしようもなくなった時の、最後の覚悟だ。自宅に留まった長男と私が、より大きな地震や大規模な崩落に見舞われ、車なのでの避難もできなくなった場合、”長男を一人で死なせない”という覚悟だ。一番いいのは私が身代わりになることだが、それも叶わない場合は、”寂しい思いはさせない””一緒に逝きたい”と思っている。だから、急いで会社から戻らなければならない。
私は長年の心労により鬱などを罹患しているので、少々考え方が極端かもしれない。ただ、非常時の心構えは、常に最悪の事態を想定しなければならない。日本がコロナで失敗しているのは、想定が甘いからだ。4つ書いたが、どれも現実に起こらないでほしい。自閉症は、多くの行動に制約が生じてしまうので、最悪の事態は常に想定しておいた方がいい、と私は思う。避難所に入れるケース、入れないケースを想定し、そこから逆算してやるべきことをリストアップする。
悪いことなど起こらない方がいい。避難する必要などないに越したことはない。今年の夏秋、台風は日本にどの程度の被害を与えるのだろうか。我が家を含め、自閉症の人ならびに当事者家族が、被災に加えて悲しむ事態に直面し合いことを切に願っている。