兄弟児の心配事
兄弟児には大きな心理的負荷がかかると言われています 兄弟児に寂しい思いをさせない配慮が必要
長男の主治医から以前言われたことで、それまでまるで考えたことがなかった課題がある。それが、自閉症の兄弟を持つ、兄弟児のケアだ。兄弟児が自閉症の兄弟や両親を過度に思いやってしまい、思春期に我慢が爆発して問題を起こしてしまうことがまれにあるので、「弟くんが無理をしていないか気をかけてあげて下さい」「思う存分甘えさせてあげて下さい」とアドバイスを頂いた。
次男は生まれながらに特異な星の元にいる。次男は、赤ん坊の頃から他の赤ん坊よりも忍耐や我慢を強いられる環境にいたと思う。ウチは3歳差の兄弟。長男が3、4歳の頃、歩くのが面倒なのでよく「次男の乗るバギーに乗りたい」と言った。これを頻繁に言われた為、次男はA型・B型のベビーカーではなく、抱っこ紐で”運ばれる”ことが多かった。次男が一人で歩けるようになりバギーの対象年齢に到達した後も、バギーに乗るのは兄貴だった。次男は小さい身なりで歩いていた。次男がベビーカーなりバギーに乗っていた期間は、よその子と比べてかなり短かったと思う。そのせいか、次男は体力があり、体格も二学年分ほど大きい。
未就学期の長男は、ストレスを感じることと自身のこだわりが最も複雑に絡み合っていて、とても大変だった。療育の通園バスに乗るまで、療育の間、帰宅してから寝るまでの間、上手くいかないことだらけだった。長男が毎日のようにパニックを起こしたり大泣きするので、長男だけでなく親も毎日カリカリしていた。その様子を見ていたであろう小さな次男は、物心つくと同時に長男のことを大事にし、両親に迷惑をかけないことを学んだように思う。次男がひっくり返って駄々をこねる姿を見たことがない。
幼稚園へ入園して最初の親子面談の際、先生から「〇〇くん(次男)は家でちゃんとわがままを言っていますか?幼稚園の生活があまりに年相応から外れ、わがままを言わず、”いい子”です。“いい子“すぎて、抑圧しているものがあるのではないかと考え、少し心配しています」と言われた。面談した妻はかなり驚いたという。家庭内では、よくわがままを言い、長男と物を取り合ってケンカしたり兄の悪事やズルを両親に密告していたので、その通り伝えると、先生は「安心しました」とおっしゃった。幼稚園では、卒園するまで「○○くん(次男)が我慢しすぎていたり無理していないか」という視点で、次男を見守って頂いた。先生から聞く次男は、”いい子”のエピソードで溢れていた。大人しい子に積極的に話をして友達の輪に引き入れたり、上手くできなくて困っている子がいたら助けたり、クラスに馴染めない転校生や二年保育の子へ積極的に話したり、自分の意見をしっかり伝えたり、率先しておかたづけをしたり.etc.。親バカのように聞こえてしまうかもしれないが、実際、次男のことで幼稚園からとてもよく褒められた。長男の面倒を見る我々を見て、自分自身も長男のことを気にかけて生活しているので、意識しなくても”ケアする”行動を取ることができるのだろう。
兄弟児が”いい子”であるほど、自分の気持ちを押し殺して”我慢”をしてしまうようです
小学校へ進学した次男は、まるで口うるさい姉が弟の世話をするように、長男の”面倒を見ている”。マインクラフトの回路の作り方を指示したり、iPadの操作説明をしたり、次男がいてくれることで親はかなり助けられている。素直に従う長男も可愛らしい。
長男がいることで、次男には苦労をかけている。日々のことだけでなく、泊りがけの旅行に行ったことがないこと、東京・神奈川・千葉・埼玉の一都三県から出たことがないこと、晩御飯を外食で済ませたことが数える程しかないこと、など、他の子と比べたら楽しいことを経験できない環境に身を置いている。これからも周りと違うことは山ほどあるだろう。でも、それが次男を成長させていると私は強く思っている。長男だけでなく、次男にも明るい未来を見せてあげたいと思い、日々努力している。
余談だが、妻は次男のことを”猫かわいがり”している。前述の「思う存分甘えさせてあげて」を実践しているのだ。妻が子離れできるか、こちらの方が心配だ。