もし妻が働いていたら 後編
(前編はこちら)
幸か不幸か、ウチは妻が専業主婦思考だったことで救われた。
私が言いたかったことは、自閉症児を育てるために妻は仕事を辞めなければいけない、ではない。言いたかったのは、わずかな分岐点が後の暮らしに大きな影響を与えるということだ。ウチにとっては、それが妻の“子どもと向き合える“時間だった。健常児よりも手がかかるのは間違いないので、親には子どもと向き合う時間が多く必要なのは間違いないだろう。運命を分ける分岐点が何であるか分からない。そして、どの選択肢が幸せに繋がっているのか分からない。
妻は家で子どもと向き合う時間を多く取ることになったが、今では少しだけ仕事できるようになった。パートへ行くことを長男が許可してくれた。不動産会社でデスクワークをしている。妻は長男の世話によって段取りが上手くなったので、仕事の効率がよくなったようだら、パート先ではかなり頼られていると聞く(本人談)。
世の中にはウチのようなケースではなく、夫婦でしっかりキャリア形成している家庭で自閉症児を育てているケースもあるだろう。中には、夫婦のどちらがキャリアを諦めざるを得ないケースもあるだろう。ひょっとしたら、ローンが重荷になって家の売却を余儀なくされた家庭があるかもしれない。
人生は何があるか分からない。これはいつも感じる。どこまでも悪い方に転がる怖さを感じる一方、長男の成長によって幸せを感じる機会が多い。健常児を育てる一般家庭の親御さんよりも、幸せを感じる回数が多いのではないか、とすら思っている。
時の流れに身を任せるしかない。どんな運命が待っているか、誰にも分からない。ただ、可能な限り柔軟に対応できる“余白“を大目にとっておいた方が良さそうだ。これは、どんな家庭にもある程度当てはまることだと思う。
人生は計画通りに進まない。予想外にいい方向へ進むことがある。