映像の記憶力

長男の自閉症には特徴的な傾向がない。強いて挙げるならば、映像の記憶力です

レインマンという映画をご存じだろうか?1988年公開、アカデミー賞を受賞した不朽の名作だ。あらすじは割愛するが、ダブル主演のトムクルーズ演じるチャーリーの兄、ダスティンホフマン演じるレイモンドは自閉症であり、劇中でチャーリーはレイモンドの「こだわり」に振り回されるシーンが数多くある。自閉症をとてもリアルに表現している映画だ。レイモンドはサヴァン症候群として驚異的な能力を有する設定になっている。最初にその能力を発揮した場面が、床に落ちた爪楊枝の数を数えてピタリと言い当てるシーンだ。兄弟が心を通わせるきっかけになるシーンでもある。

レインマンは、アメリカの自閉症の理解を数十年早めたと言われる作品です

話は我が家のことに変わる。

長男は映像の記憶に秀でている。一度見た映像を視覚的に覚える。最初に気がついたのは、長男が好きなテレビ番組を録画したレコーダーから自分の好きな番組を見つけ出している時だ。当時ひらがなすら覚えていないにも関わらず、打刻された日付と番組名、サムネイル画像で、数百ある自分の見たい番組を探していた。最初、「見たい番組はどこにあるの?」と長男に聞かれ、親があれこれ再生して探していたのだが、レコーダーの番組リストのフォルダー構造を覚えると、自分で番組を選べるようになっていた。例えば、きかんしゃトーマスだけで100話ほどある番組の中から、見たい話を選び出していた。ちなみに、長男は、ボディパーツの一部を見るだけでキャラクターの名前をいうことができた。Youtubeでも過去に見た動画をうまく探し当てていた。

せっかく持っている能力なので、彼の武器になるように育ててあげたいのだが、今はプラスに活用できていない。むしろ、今はマイナスに作用している。それは、目的地へ行くルートを目で見て覚えているので、最初の交差点の曲がり方を間違えただけで「違うー!」と言われてしまうことだ。数年前は、ディズニーランドへ行くルートを、家のそばの交差点からインターチェンジ、途中のサービスエリアに寄るところまで定型化していた。今は、前もって地図アプリで説明することで、ある程度ドライバーの裁量に任せてもらうことができるようになった。

こだわりを緩和させることができたので、我が家のお出かけはかなり楽になった。どこかで長所に変えてあげたいと思っている。ちなみに長男はトランプの神経衰弱が得意だ。神経衰弱を横で見ていた次男が、コツを掴んだのか、かなり神経衰弱の腕を上げた。小学校低学年ながら、もう親が勝てないレベルになり、長男よりも強くなった。この現象の解明は未だできていない。

映像の記憶力に関しては、親が二人束になっても叶いません。これがあることによって、日常が苦しくなることがあります

多くの自閉症当人と家族は、皆自身の傾向によって苦労しているようです